必見!赤城試験センター


電中研赤城試験センター      '00/09/01
 ここでは、2000年度黒川研合宿レポート ではお伝えできなかった赤城試験センターの研究設備を詳細にみなさんにご紹介します。  赤城試験センターは東京から北へ100km、赤城山の麓にあり、約100haの広さがあります。実際、様々な設備 への見学にはバスを使用し、また、人員数は5人ですが他の電力機関も一緒に研究をしております。 試験設備は大きく8つに分かれ研究をしております。今回は見学をした7箇所についてご覧ください。

赤城試験センター設備
1.100万ボルト送電試験設備
2.太陽光発電試験設備
3.電中研式野菜工場
4.電中研式魚工場
5.リチウム電池試験設備
6.超電導試験設備
7.酸性ガス・雨曝露試験設備
8.まとめ・感想

100万ボルト送電試験設備
    現在最高の50万ボルト送電を100万ボルト送電にすることにより約3.5倍の電力を送ることが可能 になります。これを実現するために1980年より電中研では送電試験設備を建設してきました。 主な試験としては
@地震や強風などに対する送電鉄塔の強度
A雨霧などによる送電線からのコロナ放電発生音対策
B強風による送電線からの発生音対策
があります。これまでの試験結果よりコロナ発生音を抑制するための円形状に配置された電線の 本数は8本で済むこと、電線の形状をスパイラルにすることにより風とコロナ放電の発生音を同時に 抑制することが実証されました。少し見にくいのですが、スパイラル部分はこのような感じになっております。外側に一つ電線を飛び出すような 形で捲くことにより、上から来た風と下から来た風が渦を捲き、交互に打ち消し合うために音が消える仕組みになっています。 単純ではありますが、最も効果的な方法であると思います。
 碍子はかなり重く(持った所10kg以上)、これが幾つも電線に設置してあると思うとかなりの重量になると思われます。 コロナ放電防止対策としてドーナツ状の鉄心もありました。

 実際に100万ボルト送電実験をしている時に、電線の下に立つと傘の先がバチバチ音を立てたり、 腕毛が逆立ったり、髪の毛が静電気のように立ったりすることがあるそうです。 またここ赤城山麓では雷の発生が多いそうで、鉄塔の最上部に避雷針も設置してありました。 近い将来100万ボルト送電が開始される予定ですが、同時にコロナ放電対策も必要であると再認識することができました。

太陽光発電試験設備
     やはり最も関心があるのはこの太陽光発電試験設備です。それぞれの研究テーマに近いものが あり胸膨らむ思いであったと思います。言うまでもありませんが、現在太陽光発電システムはすでに 実用レベルに達し、住宅地への利用が進みつつあります。さらに普及を進めるためには太陽電池やインバータの 低コスト化や、分散電源が増加した時の電圧上昇検証や、負荷急変、サージ侵入など様々な試験、研究が必要となります。 ここ、電中研では1983年以降、発電装置を安全に運転する試験や、発電装置を低コスト化する研究などうをおこなって きました。現在、倉庫などの屋根、高速道路の壁面、傾斜地などに取り付ける実験を行っています。
T 斜面設置型PV    左のように様々なPVが設置されております。
U 1支柱型PV
V 工場屋根型PV
C 高速道路壁面型PV
X 斜面設置型PV
Y 電柱型PV
 ここで見たのは屋外設置PVでありましたが、例えば、工場屋根型PVはスライド式設置方式であり、取りつけ、取り外しがワンタッチで可能であります。 高速道路壁面設置PVは透過型PVになっており、またACモジュールPVはインバータが裏面に設置してありました。 インバータは小型で触った感じそれほど熱くなく、防水加工もしてあるようでした。斜面には様々なPVが 設置してあり、支柱一本で支えられているPVや簡易型PV、単結晶、多結晶、アモルファスPVがありました。 研究自体は終了しているとのことでしたが、今でも系統連系をしているらしいです。 みんなで記念撮影。

 また、屋内PV模擬電源装置を見学しました。ここには模擬電源や模擬負荷、インバータが設置しており、 実際の系統との連系や、負荷急変、模擬電源によるMPPT制御の実験が可能です。また隣接した建物には個々の家を模擬した電源が設置してあり、 電圧上昇検証などが実験できます。当研究室でも似たような問題をシュミレーションで検証しておりますが、この実験装置を用いて研究をすれば、さらに信頼度の高い、実用的な結果が得られると思われます。 拡大するとこのようになります。

電中研式野菜工場
     この野菜工場では1986年以降、夜間電力を有効に利用し、ハウス内で土を使用せずに 養分を含んだ培養液で、季節や天候に左右されない無農薬野菜を1年中生産できる「電中研式野菜工場」の開発を進めています。 ここでは以下の2項目に留意して研究していました。
@野菜を栽培する棚を2段にし、上段は太陽光、下段は蛍光灯を使用しハウス内を立体的に利用することにより収穫高を増やす。
A電気を使ってハウス内の空調や培養液の温度調節を行うなどの実証試験を行う。
 ほうれん草ならば、種まきから収穫まで約1ヶ月で栽培が可能であります。(通常のハウス栽培より約半月短縮) 現在、各地域に設計、設置を推進しており、既に青森県六ヶ所村、仙台市、一部電力会社で導入されています。 全景はこのような感じです。ただ、土がないと少し寂しい気がします。 また水のみによる栽培のために、プランターに汚れがつきやすく掃除を丹念にしないといけないようでした。

電中研式魚工場
     この魚工場では魚の養殖を行っています。しかし単なる養殖ではありません。 海水循環型養殖のために内陸部や臨海部での養殖が可能になります。この魚工場では以下の二つの項目に留意して研究しております。
@魚の排泄物などで汚れた飼育用海水を微生物の働きにより浄化し、半年に半分ずつ取り替えながら飼育する。
A電気を使って水温を調節し、魚の成長を促進させるなどの実証試験をする。
 結果、ヒラメの場合、稚魚から1kgになるまでに1.5〜2年間で成長させることができました。(従来の半年ほど短縮)



 

 上図が循環型養殖の概略図になります。汚れた水をまず沈殿槽へ送り、その後硝化槽で汚染水を硝化します。続いて、紫外線殺菌灯で 殺菌を滅菌し、最後に酸素を加えて飼育槽に戻します。熱心に説明を聞いています。 所で、ここは海とは違い、ヒラメの腹が黒くなったりするそうです。また成長したヒラメが食べれると思うと楽しそうな研究に見えてきました。

リチウム電池試験設備
     ここでは現在、携帯、デジカメ、時計などに使用されているリチウム電池について研究をしていました。リチウム電池は 従来の電池に比べて約4〜5倍の電気を貯めることが可能であり、今後は電気自動車などの大型機器の電源として実用化される ことが期待されます。電中研ではリチウム電池の性能を正確に把握する方法を開発し、大型の電池(2〜3kw級)の検証が可能 になりました。リチウム電池の場合、従来の電池に比べてなまりが少なく、寿命も長いとのことです。

 また、電気自動車用電池試験設備もあります。今回は見学をしなかったのですが、ここでは電気自動車用電池の研究をしています。 電力会社と共同で電池の充電時間を短縮するために、電気自動車の実際の走行パターンを模擬した電池の充放電を繰り返す試験 を行い、短時間で効率良く充電できる方法の開発を進めています。 結果、従来の充電時間を約半分の5時間程度に短縮でき、夜間電力の時間帯において充電が可能になっています。(電気料金が昼間の1/4) また今後は鉛電池より2倍の電気を貯めることができる最新のニッケル水素電池の研究も進める予定です。

超電導試験設備
     ここでは1991年以降、国のプロジェクトに参加し、発電機用として試作された超電導線を実際の使用状態に 近いものに再現し、その性能を検証する試験を行っています。超電導物質(ニオブチタンなどの金属)はマイナス270度に 冷却すると電気抵抗がほぼゼロになります。こうすると銅線などの普通の電線に比べ2500倍もの電流を流すことが可能です。 負荷やサイリスタ変換器もあります。 概要はこのような感じです。 超電導物質はすでに医療機器やリニアモーターカーなどに利用されていますが、発電機やケーブルなどの電力機器に利用 できれば、コンパクト化、効率化が可能になります。

グレイテゥ!!(Kさん感想)研究はおもしろそうでした。

酸性ガス・雨曝露試験設備
   ここでは1970年以降、問題となってきた酸性雨、酸性ガスについての検証をしています。ブナ、サクラ、コナラ などの広葉樹やスギ、ヒノキなどの針葉樹に対して、長時間、人工的な雨を降らせたり、主要な大気汚染 物質であるオゾンと二酸化硫黄が樹木に与える影響について調べています。 これまでの試験から
@我が国で現在観測される程度の酸性雨、霧の酸性度(PH)は直接的な影響は考えにくい。
A現状濃度レベルでもオゾンは樹木の成長に影響を与えている可能性が高いが、高濃度の二酸化硫黄が複合 した場合は影響が拡大することなどが明らかになった。

 上写真のように上から眺めるだけでしたが、オープントップチャンバー内に試験用植物がいくつか 置かれているのが見えました。いくつか枯れてしまったものが外に置いてありましたが、試験センターを 囲んでいる木々は青々を茂っており、よほどの酸性雨でなければ枯れないようでした。

まとめ・感想
   以上で「密着・赤城試験センターの全貌」を終わります。それぞれの試験設備が実用化レベルまで達しており 我々の研究とは次元が違う気もしましたが、とても勉強になりあっという間の3時間でした。 雨も降らず見学日よりでした。暑い中、丁寧に説明をしてくださった試験センターのみなさんにこの場を借りてお礼申し上げたいと思います。 ありがとうございました。

参考試料:(財)電力中央研究所 赤城試験センター パンフレット
参考試料:(財)電力中央研究所 パンフレット

電力中央研究所 赤城試験センター

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